印刷

ページ番号:6599

更新日:2026年7月23日

ここから本文です。

学芸員の部屋

ここでは当館学芸員のコラムを随時掲載していきます。

2026年7月23日

学芸課長 山本 雅美

奈良県立美術館のインクルーシブアートミュージアム構想について
~学芸員・司書・行政職員は日々、学んでいます~

 奈良県立美術館では、令和7年度より、一般財団法人地域創造の支援をいただき「私たちの美術館」教育普及事業を立ち上げ、インクルーシブアートミュージアム構想を実現すべく、様々な事業を展開しています。これは、美術館が芸術文化を通して社会的包摂を進め、共生社会を実現するために、どのような役割を果たすべきかを実験するものであります。 

 この事業の一環で、令和7年度から奈良県文化施設専門職員及び行政職員を対象とした研修会を行っています。昨年8月に、なら歴史芸術文化村において、奈良・たんぽぽの家の代表理事の岡部太郎氏を講師に「障害者の芸術文化活動の現在」に関する講義を、一般社団法人メノキの三輪途道氏(彫刻家)、福西敏宏氏(代表理事)、株式会社ジンズの秋本真由美氏を講師に、「ことばで触れる、かたちの世界-手で鑑賞するワークショップ」を開催しました。また、令和8年3月には、奈良県立美術館を会場に、一般社団法人アーツアライブ代表理事の林容子氏を講師に「ミュージアムにおける文化的処方」をテーマとした講義、認知症とその家族を対象とした対話型鑑賞会「アートリップ@奈良県立美術館」を開催しました。

 3回目の研修になる今回は、「触ってみる/さわって見る―触ることと見ることの関係を考える」をテーマに、「触図」と「触れる3D模造」を使って、平面や立体の美術作品や文化財の触察による鑑賞について考えました。博物館・美術館・図書館などは視覚が重視される施設ですが、触察鑑賞を取り入れることで、美術作品や文化財を体感的・体験的にとらえることができ、視覚障害のある人のみならず、子どもや高齢者など様々な人に施設を開いていくことが可能になります。研修では、この領域の実践を行っている専門家を講師に招き、具体的な事例を紹介していただきました。

 美術館というものは、地域において、学校や図書館のように、人々の交流を生み、つながりをつくる場や組織です。このような「社会的インフラ」としての美術館は、人々の健康とウェルビーイングを守るようにデザインされているか、必要な人すべてに開かれているか。そのような存在意義を美術館が地域において見出すことが出来るか、これが今、問われているのだと思います。

 触察鑑賞をはじめ、多様な感覚を尊重する展示や活動を行い、「みんなに開かれた美術館」であること。つまり「私たちの美術館」になること。当館は、一連の試みを通して、美術館が持続可能な未来に向けて地域の発展に寄与する存在として役割を果たすことを目指していきたいと思います。

 

01_触図の様子
▲触図の体験

02_東大寺研修
▲研修の様子

03_「光の存在 光明観音」の3D模造
▲「光の存在 光明観音」の3D模造

 

 

バックナンバー

お問い合わせ先

ピックアップ

 
 

おすすめサイト