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ページ番号:22514
更新日:2026年4月1日
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万葉集
2026年4月号
はじめての万葉集
vol.143
春山は 散り過ぎぬとも 三輪山(みわやま)はいまだ含(ふふ)めり 君待ちかてに
柿本朝臣人麻呂之歌集(かきのもとのあそみひとまろのかしゅう)(巻九・一六八四番歌)
訳 春山のおおかたは散り果てたとしても、この三輪山はまだつぼみです。あなたをいまだにお迎えできずに。
春の三輪山
三輪山は、桜井市にある標高四六七メートルの山で、大神神社の御神体です。本歌は、三輪山周辺の山の花が散ってしまったことに対して、三輪山はまだつぼみであることを詠みます。春の訪れが遅いのは、三輪山の標高が高いためでしょう。標高五〇〇メートルだと、低地よりも一カ月ほど遅いと考えられています。 古代人は、現代人以上に季節の移り変わりに敏感でした。農業の収穫により、安定した生活を得ることが重要な関心事だったからです。種蒔きの時期である春は、特に意識されたのです。為政者にとって、農作業で多忙な春は、大規模事業を避けるのが原則でした。三輪山周辺を本貫地とする三輪(大三輪・大神)氏も例に漏れません。そのことを強く意識したのが三輪高市麻呂です。高市麻呂は飛鳥時代後期の人物です。壬申の乱の際には、大海人皇子(天武天皇)に味方し、勝利に貢献しました。その後も、天武天皇・持統天皇の信頼を得て、重職を担います。ところが、持統六(六九二)年二月に、持統天皇が同年三月三日に伊勢へ行幸するので準備せよと命令しました。これに対して、高市麻呂が、この時期の行幸は農事の妨げになるので、中止すべきと天皇に諌言しました。さらに、行幸当日にも高市麻呂は冠を脱ぎ、重ねて諌言したものの、天皇は聞き入れませんでした。冠を脱ぐことは、職を賭す意味を含みます。この時に辞職したかは不明ですが、高市麻呂の動向は大宝二(七〇二)年まで確認することが出来ません。この間、故郷で春の三輪山を眺めていたのかもしれません。
(本文 万葉文化館 中本 和)
万葉文化館 イベント情報
特別展 「隙あらば猫 町田尚子絵本原画展」
開催中〜5月6日(振休)怖さとユーモア、美しさと不思議さをあわせもった画風で緻密な描写が魅力の絵本作家・町田尚子さんの絵本原画や絵画などを展示します。万葉文化館にちなんだ作品もご覧いただける展覧会です。小・中学生、国内の高校生・18歳未満の人は無料。その他割引など、詳しくは当館HPをご覧ください。
『ネコヅメのよる』原画 岩崎書店
2021年(WAVE 出版 2016年)
学芸員によるギャラリートーク 申込不要・要観覧券
日時:4月29日(祝) 14時〜[会場]日本画展示室
隙あらばウチの猫!我が家の猫自慢
開催中〜5月6日(振休)募集した自慢の猫ちゃんの写真を掲示します。
[会場]当館1階 ホワイエ
万葉集をよむ 無料・申込不要
日時:4月22日(水曜日) 14時〜15時30分
「雑歌(1)」(巻9・1664〜1681番歌)[講師]井上 さやか(当館企画・研究係長)
[定員]150人(先着)
※アーカイブ配信(翌日から1週間視聴可)
にぎわいフェスタ万葉 春
日時:4月25日(土曜日)〜6月7日(日曜日)まで
詳しくは当館HPをご覧ください。
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☎0744-54-1850 ホームページ