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ページ番号:23863
更新日:2026年6月1日
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万葉集
2026年6月号
はじめての万葉集 vol.145
采女(うねめ)の 袖(そで)吹きかへす 明日香風(あすかかぜ) 都を遠み いたづらに吹く
志貴皇子(しきのみこ)(巻一・五一番歌)
訳 采女の袖を吹きひるがえす明日香の風、今は都が遠いので、空しく吹いている。
飛鳥宮と藤原宮
この歌の題詞には「明日香宮より藤原宮に遷居(うつ)りし後に、志貴皇子の作りませる御歌(みうた)」と記されており、六九四年の藤原京遷都後に詠まれた歌と考えられます。現代語訳にあるとおり、都が遠くなり今は風だけがむなしく吹いているという明日香を悼むような内容です。
志貴皇子はなぜ、もうそこにいない采女たちの袖が風にひるがえる様子を表現したのでしょうか。
「采女」とは、天皇の身のまわりのお世話をつとめる女官のことであり、地方豪族出身の女性たちで構成されていたといわれます。律令の規定に拠れば、育ちがよく教養もある選りすぐりの美女たちでした。
彼女たちの服装は、高松塚古墳壁画にみられるような色鮮やかなものだったと考えられます。この歌では、そのきらびやかな衣の袖が「明日香風」にひるがえる様子が表現されており、「明日香宮」を象徴する情景として描かれているとみられます。
国史跡「飛鳥宮跡」は、現在の明日香村大字岡(おおあざおか)を中心とした場所にあり、橿原市醍醐(だいご)町周辺にあった藤原宮とは数キロメートルしか離れていません。それなのに、都が遠くなってしまったと表現したのは、律令制に基づく中央集権国家の完成に向けて、政治の仕組みや社会常識が大きく変化したことを指しているのではないかといわれます。物理的な距離ではなく、心理的な遠さであったと考えられます。
志貴皇子は、旧時代と新時代とを知る皇族の一人として、旧都を慰撫する歌を詠むことで、新しい時代の幕開けを言祝(ことほ)いだとみられています。
(本文 万葉文化館 井上さやか)
万葉文化館 イベント情報
◆県立万葉文化館・奈良県立美術館 連携企画展
「たびにしあれば 奈良県立万葉文化館・奈良県立美術館コレクションから」
開催中~7月12日(日曜日)
自ら住まう土地を離れて異郷へと向かう「旅」をテーマに、『万葉集』から現代の作品まで、時代の変遷する旅のあり方を奈良県のコレクションを通して展観いたします。
国内の小・中学生、高校生・18歳未満の人は無料。その他割引など、詳しくは当館HPをご覧ください。

石川義「祈り」
平成10(1998)年
奈良県立万葉文化館蔵
●美術講座「奈良県立美術館のコレクションについて」 申込不要・要観覧券
6月14日(日曜日)14時~15時30分
[会場]企画展示室および日本画展示室
[講師]三浦 敬任(奈良県立美術館学芸員)
●ギャラリートーク 申込不要・要観覧券
6月17日(水曜日)15時40分~
[会場]日本画展示室
[講師]当館学芸員
◆万葉集をよむ 無料・申込不要
6月17日(水曜日)14時~15時30分
「雑歌(ぞうか)(3)」(巻9・1695〜1709番歌)
[講師]榎戸 渉吾(当館研究員)
[定員]150人(先着)
アーカイブ配信(翌日から1週間視聴可)
詳しくは当館HPをご覧ください。
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電話:0744-54-1850
お問い合わせ先
地域創造部万葉文化館