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ホーム > 奈良の農・林・食 > コラム「うまさの源流」 > 【農】奈良のスイカは絶品(鎌田道隆)
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今年の夏も暑かったですね。そんな夏の楽しみといえばスイカ、スイカと言えば、熊本、鳥取などが主な産地ということでしょうか。しかし、奈良こそスイカの名産地なのですよ。そんなことを学んだお話を今回は聞いていただきましょう。筆者の体験談です。
私は昭和55年から、縁があって奈良大学に勤務させていただきました。奈良大学に着任してまもなく、故郷の屋久島にいる父から電話があり、「すまないが、奈良に勤めるようになったのなら、大和農園に行ってスイカの種と台木にするカンピョウの種も買って送って欲しい」と依頼されたのです。じつは私の父は貧しい農家でしたが、屋久島ではスイカ作りの名人と自他ともに認められ、おいしいスイカはひっぱりだこの人気でした。これまでも大和農園の通信販売本で種を購入してきたが、新種の種が発売されて、自分の作りたいものが本から消えたけれど、農園に行けば買えるとのことだったようです。
大学の空き時間に大和農園まで行き、指定された種を購入してすぐに父へ送りました。奈良のスイカが屋久島で栽培されていること、だから美味しかったことも驚きでしたが、スイカの種一粒が100円と高価なのもびっくりでした。それから毎年大和農園通いが続きました。自分で収穫したスイカから来年用の種を取ってもよいが、大和農園で種用に栽培されたものでないと、ほんとうに美味しいスイカはできないというのが、父の実験結果だったようです。
江戸時代に奈良奉行として活躍した川路聖謨(かわじとしあきら)の日記『寧府紀事』(ねいふきじ)を勉強していて「奈良のスイカは絶品、紅の雪を食うごとく、口に入れれば水となるなり」お奉行さまの評価の文章に出会い、屋久島の父が作ったスイカの味を思い出したのです。「吉衛さん(父)のスイカは甘くて雪のようで、口のなかでとけてゆくよ」と評判をしていた島のひとびとの言葉もよみがえってきたのです。
川路聖謨は奈良町や農家の人たちがお奉行所に届けてくれる花や果物などについて日記によく書き留めています。「瓜のなった鉢植えを、八百屋や魚屋が届けてくれた」「奈良の者は身分が低くても風流の気持ちがあり、出入りの油屋が花桶に入れた夏菊と百合を持ってきた」とか、「奈良では牛を牽(ひ)く女でも、笄(こうがい※)や簪(かんざし)を髪飾りにつけている」など生活風俗の風雅さもちゃんと見ていました。
奈良のスイカは絶品と、お奉行さまをうならせた美味しいスイカが、江戸時代から今日まで、奈良で守り育てられている。 川路聖謨風にいえば「絶倒!」かな、拍手喝采ですね。
※笄(こうがい):昔の女性が髷(まげ)にさして飾りにした、箸のように細長い道具

鎌田道隆氏
1943年鹿児島県 屋久島生まれ。立命館大学で日本史を学び、京都市史編纂所で京都の歴史の調査・執筆・編纂にあたる。1980年に奈良大学教員となり、学長職6年を含め2011年まで在任。その間、江戸時代のからくり玩具の復元研究や、江戸時代の庶民にもっとも親しまれた旅、お伊勢参りの復元体験など「実験歴史学」を学生とともに実践。現在 奈良大学名誉教授、奈良町からくりおもちゃ館の名誉館長。

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