印刷

ページ番号:25118

更新日:2026年8月1日

ここから本文です。

manyo 2608

万葉集

2026年8月号

はじめての万葉集 vol.147

いにしへの 事は知らぬを われ見ても 
久しくなりぬ 天(あま)の香久山(かぐやま)

作者未詳 (巻七•一〇九六番歌)

 

古い昔のことは知りようもないほどだが、わたしが見てからでさえ、こんなに久しくなった。聖なる香具山よ。

manyo01 2608

「いにしへ」からそびえる香具山

 耳成(みみなし)山・畝傍(うねび)山とともに大和三山に数えられる香具山を詠んだ歌です。香具山は伊予国風土記逸文(いよのくにふどきいつぶん)(現在の愛媛県の地誌ですが、この風土記は現存せず、別の本に引用される形で断片的に伝わっています)などに天から天降(あまくだ)った山であることが記されているほか、『万葉集』に大和三山の妻争いの伝説がうたわれているように(巻一・一三~一四)、古来より神話や伝承を持ち大和の人にとって特別な山でした。

 第一句の「いにしへ」は「往(い)に+し+辺(へ)」で、現在まで続く連続的な過去をいう表現です。一方、「むかし」は既に過ぎ去った、断絶したものとして過去を捉える表現です。ですから、自分たちの歴史を語る場合には「いにしへ」が使われ、物語では「むかし」が使われました。現代でも昔話は「むかしむかしあるところに…」と始まります。「むかし」は自分たちとは断絶したいつかを述べる表現であったのです。本歌の「いにしへ」は、詠み手が香具山の神話や伝承を自分と連続したものとして捉えていることを表します。上二句で「そんないにしえのことは知らないが」と述べるのは、自らが直接体験したわけではないことを言いつつ、かえって香具山についてのさまざまな神話や伝承があったことを暗示させています。

 第三・四句の「われ見ても久しくなりぬ」は幼い頃からずっと香具山を眺めてきたことをいうのでしょう。山を見て改めて悠久の時に思いを馳せているのです。本歌はそんな聖なる「天の香具山」が「いにしへ」から変わらずにそびえ立つことを讃(ほ)めた歌なのです。

(本文 万葉文化館 榎戸 渉吾)

万葉文化館イベント情報

開館25周年記念 万葉古代学リレー講座

「歴史に学ぶ― 藤原京と万葉集 ―」 無料・申込不要

8月8日(土曜日) 14時~15時30分(13時30分開場)

[講師] 上野 誠 (國學院大學特別専任教授・元万葉古代学研究所副所長)

[定員]300人(先着)

 

万葉集をよむ 無料・申込不要

8月19日(水曜日)14時~15時30分

「雑歌(ぞうか)(5)」 (巻9・1726〜1737番歌)

[講師] 中本 和(当館主任研究員)

[定員]150人(先着)

 ※アーカイブ配信  (翌日から1週間視聴可)

 

にぎわいフェスタ万葉 夏

開催中~8月29日(土曜日)

夏休みこども万葉教室 無料・申込不要

 8月22日(土曜日) ①10時30分~ ②13時30分~ 各回約70分

[講師] 榎戸 渉吾(当館研究員)

[定員] 各回小・中学生15人  (先着・保護者同伴可)

さぁ出かけよう! 「飛鳥・藤原の宮都」 無料・申込不要

 8月27日(木曜日) ①10時30分~ ②13時30分~ ③15時~ 各回約40分

[講師] 北井 利幸(橿原考古学研究所指導研究員)

 

令和8年8月1日より、当館駐車場は有料になりました。

詳しくは当館HPをご覧ください。

manbun
電話: 0744-54-1850
HP:www.pref.nara.lg.jp/manyo

お問い合わせ先

地域創造部万葉文化館