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ページ番号:18945
更新日:2026年2月27日
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はじめての万葉集
県民だより奈良
2025年9月号

【vol.137】
難波門(なにはと)を 漕(こ)ぎ出(で)て見れば
神(かみ)さぶる 生駒高嶺(いこまたかね)に
雲そたなびく
大田部三成(おおたべのみなり)(巻二十・四三八〇番歌)
訳 難波の港を漕ぎ出してみると、神々しい生駒の高嶺に雲がたなびいている。
防人が見た生駒山
本歌を含む四三七三~四三八三番歌の十一首は、四三八三番歌の左注によると、下野国(しもつけのくに)(現在の栃木県)の防人(さきもり)の詠んだものとして収められています。元々、進上された歌は十八首でしたが、出来の良くないものは収められなかったと記されています。また、本歌の左注によると、作者は、梁田(やなだ)郡(現在の栃木県足利市)の人、大田部三成です。すなわち、三成が防人として西海道(九州)に向かう途中で詠んだことが分かります。
防人とは、古代に辺境の防備についた兵のことです。天智二(六六三)年八月、百済(くだら)救援戦争(白村江(はくすきのえ/はくそんこう)の戦い)で唐・新羅(しらぎ)の連合軍に敗れた日本には、大陸からの派兵に備える必要が生じていました。そのため、九州北部沿岸の防備が、以前よりも重視されるようになったのです。
防人は、本歌のように東国から徴発されることが多く、その往還も負担の大きいものでした。難波は梁田郡から大宰府までのおおよそ中間点にあたります。「難波門」は難波の門(入口)と考えられますが、「門」を「津」の誤りとする説もあります。
難波から大宰府までは、瀬戸内海を船で通過することが通常でした。そのため、難波からは比較的安全な内海を通り、九州上陸後は自らの足で歩く距離もあと少しとなります。また、難波までの食料は防人本人の負担でしたが、以降は公用として支給されました。
難波から出航して一息ついた際に、故郷のある東を向くと、生駒山が目に入ってきます。生駒山を神々しいと詠んでいますが、どのような想いで見たのでしょうか。
(本文 万葉文化館 中本和)

万葉文化館 イベント情報
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開催中~9月15日(祝)
明日香村出身の画家で、満93歳になる烏頭尾精さん。本展では、16年の歳月をかけて奈良や京都の古都の風景を描いた「古都シリーズ」を一挙に公開します。

烏頭尾精《夏蒼天》
2023年 個人蔵
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万葉の日記念講座
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※オンライン視聴は要申込(定員なし)
- 文学研究からみた「飛鳥池工房遺跡」の意義
[講師]井上さやか(当館企画・研究係長) - 国宝・重要文化財に指定された『万葉集』の写本
[講師]榎戸渉吾(当館研究員) - 世界記憶遺産『御堂関白記』―文化の庇護者としての藤原道長―
[講師]中本和(当館主任研究員)
万葉集をよむ
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9月10日(水曜日)14時~15時30分
「秋の雑歌(ぞうか)(6)」
(巻8・1574~1591番歌)
[講師]榎戸渉吾(当館研究員)
[定員]150人(先着・申込不要)
※オンライン視聴は要申込(定員なし)
にぎわいフェスタ万葉 秋
9月15日(祝)~11月24日(振休)
※詳しくは当館HPをご覧ください。

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