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ページ番号:10093
更新日:2026年2月27日
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はじめての万葉集
県民だより奈良
2024年7月号

【vol.123】
大和(やまと)には 群山(むらやま)あれど
とりよろふ 天(あま)の香具山(かぐやま)
登り立ち 国見(くにみ)をすれば
国原(くにはら)は 煙(けぶり)立つ立つ
海原(うなはら)は 鷗(かまめ)立つ立つ
うまし国そ 蜻蛉島(あきづしま) 大和の国は
舒明天皇(じょめいてんのう) 巻一(二番歌)
訳 大和には多くの山があるがとりわけてりっぱに装(よそお)っている天の香具山、その頂きに登り立って国見をすると、国土には炊煙がしきりに立ち、海上には鷗が翔(かけ)りつづけている。
美しい国よ、蜻蛉島大和の国は。
舒明天皇の国見
作者は、推古天皇のあとを受けて即位した舒明天皇(在位:六二九~六四一年)です。
推古天皇は、田村皇子(たむらのおうじ)(後の舒明天皇)と山背大兄王(やましろのおおえのおう)(厩戸皇子の子)の二人を有力な皇位継承候補と見なしていましたが、どちらも決め手に欠けていました。推古天皇が後継者を決めることなく崩御したため、豪族たちの意見も分かれました。結局、大臣(おおおみ)である蘇我蝦夷(そがのえみし)などの支持を得た田村皇子が即位しました。
即位の経緯などから蘇我氏の傀儡(かいらい)と評されることもある舒明天皇ですが、天皇の支配を象徴する儀礼である国見を挙行したことが当該歌から知られます。国見とは、元来は春に行われる農耕儀礼で、秋の収穫への予祝行為でした。それが、支配者が国土を見渡せる高所に登り、国の地勢や民の生活状況を見る儀礼となっていきます。
大和には多くの山がありますが、大和三山の一つである天香具山に登った舒明天皇が、自身の営んだ宮である飛鳥岡本宮をはじめとした国土を見下ろし、国の豊かさを誇示しています。統治者としての権威が可視化されているのです。
その支配領域を示す語として「海原」が用いられていますが、天香具山の標高は約150mであり、海が見えるわけではありません。「海」は、必ずしも海面を意味せず、例えば、琵琶湖に「近淡海(ちかつあわうみ)」などの称があるように、湖や池などの広々とした水面も意味します。すなわち、周辺の埴安(はにやす)・耳成(みみなし)・磐余(いわれ)などの池を指すのでしょう。「国原」と「海原」の語を並べることで、陸と水の広がりを意識させていると考えられます。
(本文 万葉文化館 中本 和)
万葉文化館 イベント情報
館蔵品展「万葉 恋ものがたり」
7月20日(土曜日)~9月16日(祝)
『万葉集』におさめられた男女の恋歌をモチーフに描かれた「万葉日本画」から、万葉の人々の恋模様を垣間見てみましょう。

大野俊明《清隅の》
万葉集をよむ「春の雑歌(ぞうか)(4)」(巻8・1441~1447番歌)
7月24日(水曜日)14時~15時30分
- [定員]150人(先着)
※オンライン視聴は要申込(定員なし) - [講師]井上さやか(当館企画・研究係長)
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にぎわいフェスタ万葉 夏
7月20日(土曜日)~8月28日(水曜日)
当館研究員や学芸員による子どもを対象とした夏休みイベントのほか、コンサートや巨大めいろも登場!詳細は決定次第HPに掲載します。

巨大めいろ イメージ写真


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