更新日:2025年12月11日
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県の面積の約77%を森林が占め、約500年以上「林業」が続く奈良県。豊かな森林を守り受け継いでいけるよう、奈良県では、大人から子どもまで、奈良の木の良さや木の文化への理解を深めていただくための取り組みを進めています。その一環として2021年2月、<木育インストラクター養成講座 IN 奈良>が開催されました。講師を務めたのは、岐阜県を拠点に木育の活動をされている福島計一さん。今回は講座の様子や受講生の声、そして福島さんの木育インストラクターとしての活動への想いをレポートでお伝えします。
『木育』とは、子どもから大人まで、生涯にわたり木に関する様々な体験を通して、豊かな感性を育みつつ、森林や環境問題に対する理解を促す活動です。子どもの「自立」と「個性」を尊重し、「人」と「人」・「モノ」・「自然」とのつながりや大切さを伝える、「心」を育む活動でもあります。
木育インストラクターとは、「木育」の目的を理解し、森林や林業、木材、環境についてわかりやすく伝える指導者であり、木育インストラクターには、情熱と使命感を持って、その地域で「木育」を推進していくリーダーとして活躍することが期待されます。

木育インストラクター 福島計一さん
今回、奈良県で初開催となった「木育インストラクター養成講座」には、保育士や子育て支援関係者、木材事業者、行政関係者など、計23名が参加。木製品を保育や暮らしに取り入れる意義を学び、木で「作る」「遊ぶ」心地よさを体感し、子どもたちへのよりよい伝え方を考える機会になりました。
講座のカリキュラムは2部制で、午前中の第1部は木育概論。世界でも有数の森林率を誇る木の文化の国である日本の森林が、木材需要の減少で危機的状況にあることや、子どもの原体験として樹・木と親しむ重要性、「樹(木曜日)とふれあい、樹(木曜日)に学び、樹(木曜日)と生きる」ことをあたりまえと感じる「心の共育(きょういく)」などについて、座学で学びました。

午後の第2部では、木育プログラムを体験する2つの実習が行われました。1つ目は、木を五感でじっくり感じるために、目を閉じて触る、匂う、耳元でカチカチ音を鳴らすことなどを取り入れた「水の積み木づくり」。積み木はすべて水に強い木(スギ、ヒノキ、ホオノキ、クリ、ミズナラ、イチョウ)を使用。木を紙やすりで削るための道具の使い方の説明や、水遊びの前に絵本の読み聞かせで関心を引くなど、福島さんの日々の活動における工夫やアドバイスが伝授されました。



2つ目の実習は、木育プログラムづくり。ねらいや伝え方を踏まえ、5W1H(いつ、どこで、誰に、どのくらいの時間、何のため、どんな流れ)+奈良らしさをお題にグループワークが行われ、「水の積み木の船×遣隋使船」や「三輪そうめん×生駒の竹」といったアイデアが出されるなど、みなさん真剣に取り組んでいました。

そして最後は、「木育インストラクター資格認定証」の授与式です。福島さんの手からみなさん一人一人に認定証が授与されました。

実際に木育インストラクター養成講座を受講してどう感じたのか、そして今後「木育インストラクター資格」をどのように活かしていきたいかを受講者にうかがいました。

受講を通して、みなさんたくさんの気づきがあったようですね。
最後に、講師を務めた福島さんにも想いをうかがいました。
「木育インストラクター資格」を生涯学習としての資格ではなく、実践・伝える役割として活動していってほしいです。木育のポイントは「体験を通して気づく、伝える」こと。まずは木材利用、木に関心を持ってもらい、そこから「食」などさまざまな分野との繋がり、そして大切さに気づいていってくれたら嬉しいです。
また「木」を通して、その地域にしかない魅力に気づいていってほしいですね。今は地方に移住する人が多いですし、地方は都心よりは便利ではないかもしれないですが、都心にはない良さがたくさんあります。そういう風に、どんどん「木」以外の文化にも目が向いていくのが理想です。
「木育インストラクター」の方々には、何か目標があると良いのではないかと考えています。例えば、みなさんで集まって、実際に『木育』の重要性を伝えるワークショップを開催するなど。そうした取り組みを、私をはじめとした『木育』にまつわることを生業にしている人がフォローアップする。そういった流れをつくり、ゆくゆく自身で考え、調べて、広げていく活動をしてくださるキーパーソンや、実際に生業にしてくれる方が増えたら嬉しいです。
福島さんの熱い想いが伝わってくる、学びと気づきの多い講座でした。これを機に、みなさんも自然や木の大切さ、そしてふるさとの良いところ、『木育』の重要性について考えてみてはいかがでしょうか。
PROFILE
1973年生まれ、神奈川県出身。子どものころ、近所の雑木林や畑の中を、虫や鳥、花を探して走り周った原体験を持つ。大学在学中、慣れ親しんだ神奈川県西部の丹沢山塊で起こっている様々な環境問題に触れたことがきっかけで、「環境教育」の道へ進む。その後、環境教育施設でのインタープリテーション(自然解説)業務を得て、2007年にアカデミーに入学。木工の基礎を学びながら、木育教室の企画と運営を実践。在学中に「共育工房IPPO」を立ち上げて、現在に至る。
文:「奈良の木のこと」編集部
2021年3月19日(記事公開日)