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ページ番号:21261

更新日:2026年3月10日

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万葉集

2026年3月号

はじめての万葉集~春来るらし

冬過(す)ぎて 春来(きた)るらし

朝日さす 春日(かすが)の山に 霞(かすみ)たなびく

作者未詳(巻十・一八四四番歌)

【訳】冬がおわって春が来たらしい。朝日のさす春日山に霞がたなびくことよ。

春来るらし

この歌は「詠霞(えいか)」と題された歌群の中の一首で、季節に関わる歌を集めた『万葉集』巻十に収められています。

作者も詠まれた時期も明確にはわかりませんが、類似する表現を持つ持統天皇歌「春過ぎて夏来るらし白栲の衣乾したり天の香具山」(巻一・二八)が最古の季節歌と考えられており、それ以降の歌とみられます。

朝の春日山に霞がたなびいている景色を見て春の到来を感じたと表現されていることからも、春日山の西に営まれた平城京に遷都した後の歌であった可能性が高いといえます。

万葉歌が詠まれ書き記された時代は、まだひらがなやカタカナがありませんでしたので、すべて漢字で書き表していました。この歌の場合は「寒過暖来良思朝烏指滓鹿能山尒霞軽引」といった具合です。

「寒」は寒い季節の意味で「ふゆ」、反対に「暖」は暖かい季節ということで「はる」とよませたと考えられています。その一方で、「良思」は漢字の意味とは関係なく「らし」の発音を、「滓鹿」も同様に「かすが」という発音を示すための表記です。また、「朝烏(あさひ)」は、太陽の中に三本足の烏(からす)がいるという中国の伝説による太陽の別称「金烏(きんう)」にもとづく用字とみられます。「たなびく」を「軽引」と表記しているのもとても面白く感じます。「霞」のように、現代と同じ文字とよみかたもあれば、まったく異なる漢字の使い方もあり、興味は尽きません。

現代日本語の感覚からするとふざけたような当て字にみえる例もありますが、外国語の文字であった漢字を使って自国語を書き表そうとしていた時代の、創意工夫の痕跡を垣間見ることができるように思います。

(本文 万葉文化館 井上さやか)

万葉文化館 イベント情報

特別展「隙あらば猫 町田尚子絵本原画展」

開催中5月6日(祝日・振替休日)まで

怖さとユーモア、美しさと不思議さをあわせもった画風で緻密な描写が魅力の絵本作家・町田尚子さんの絵本原画や絵画などを展示します。万葉文化館にちなんだ作品もご覧いただける展覧会です。

※小・中学生、国内の高校生・18歳未満の人は無料。その他割引など、詳しくは当館ホームページをご覧ください。


『わたしのマントはぼうしつき』

原画 岩崎書店 2021年

学芸員によるギャラリートーク【申込不要・要観覧券】

3月21日(土曜日)14時から

会場:日本画展示室

おはなしの森【無料・申込不要】

3月20日(祝日)11時から/14時から

当館万葉図書・情報室の職員が特別展にちなんだ町田尚子さんの絵本の読み聞かせを行います。

会場:万葉図書・情報室

隙あらばウチの猫(こ)!我が家の猫自慢

開催中5月6日(祝日・振替休日)まで

募集した自慢の猫ちゃんの写真を掲示します。

会場:当館1階 ホワイエ

万葉集をよむ【無料】

3月18日(水曜日)14時から15時30分

「冬の相聞(そうもん)」(巻8・1655から1663番歌)

講師:榎戸 渉吾(万葉文化館研究員)

定員:150人(先着・申込不要)

※オンライン視聴は要申込(定員なし)

にぎわいフェスタ万葉 春

4月25日(土曜日)から6月7日(日曜日)まで

※詳しくは当館ホームページをご覧ください。

 

奈良県万葉文化館ホームページ

電話番号:0744-54-1850