トップページ > 移住相談 > ローカルステイ・プログラム「暮らす奥大和」 > 令和7年度 上北山村編 > 子どもを一番に考える夫婦が、 山村の子育てを感じた2日間
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更新日:2026年8月23日
文=赤司研介(imato)写真=村上由希映
2025年12月13日、季節は大雪。冬将軍が到来し、山々だけでなく平野部にも雪が積もり始める時期にもかかわらず、よく晴れた暖かな冬の日。上北山村で4回目となる移住体験プログラム「暮らす奥大和」はスタートしました。
参加してくれたのは、大阪府泉南市からお越しの村上マサキさんと妻のチサさん、お兄ちゃんのリョウくんと、弟のハルくんという村上さんご一家です。夫妻は子どもたちがのびのびできる環境を探して、街から田舎への移住を検討中。特にハルくんは運動が大好き過ぎて、常々「もっと自由にさせてあげられたらいいな」と思っていることを、チサさんは事前の面談で話してくれました。
そんな村上家の皆さんは、実はこの夏に一度この村を訪れていました。持ち前のバイタリティを発揮して集落のお祭りなどにも飛び入りで参加。その上で、夫妻は良い意味で子どもの少ない環境、住民それぞれが力を発揮して地域を作っていく集落のあり方に強く心が惹かれたそうです。そして、「もう一度ゆっくり訪れたい」と思っているところにmossumoのお二人からプログラムへの誘いがあり、夏の訪問時とは異なる時期の村を知ってみたいと考え、この日を迎えたのでした。
今回、子どもたちの顔出しがNGのため、基本的に後ろ姿の写真でお届けします。

mossumoの小谷雅美さんとの待ち合わせ場所は、キッズルームや図書館、体育館などがある旧上北山小学校の校舎を利活用した「とちの木センター」です。お昼過ぎ、村上家の皆さんが大阪からやって来ました。
小谷さん:村上さん、こんにちは!今日は暖かくてよかったですね。短い時間ですが、2日間よろしくお願いします。
車を降りた次男のハルくんは「待ってました!」とばかりに駆け出し、ブランコを漕ぎ始めました。

噂に違わぬ元気少年。お兄ちゃんのリョウくんは、「こんにちは」と挨拶を返してくれました。ハルくんが遊び終わるのを少しだけ待って、みんなでとちの木センターへ。なんと、上北山村の子どもたちが大勢集まってくれているそうです。

階段を上がって長い廊下を進むと、キッズルームに改修された元教室に到着。上は中学三年生の男の子から、下は保育園に通う子まで、総勢11名の子どもたちとそのお母さんが来てくれていました。

床にはマットが敷き詰められ、丸テーブルの上には山盛りのお菓子が用意されています。小さな滑り台やジャングルジム、電車の模型、プラレールやブロック、ボールや絵本などなど、親子で過ごせるアイテムが盛りだくさんです。
小谷さん:お菓子いっぱいあるから、いっぱい食べてね!


リョウくんとハルくんは促されてテーブルに近づき、お菓子を手に取ってもぐもぐスタート。
女の子:たけのこの里ときのこの山、どっちが好き?しあわせパンダって知ってる?
人懐こい女の子が二人に話しかけます。一方で、中学三年で一番のお兄さんという、赤いパーカーを着たソウスケくんは、マサキさんとチサさんの近くに来て会話を始めます。

チサさん:中学生は何人いるの?
ソウスケくん:中一が三人、中二が一人で、中三が僕だけです。
マサキさん:一人かぁ。寂しい?
ソウスケ:そうですね、寂しくなくはないですけど、下級生の子もいるし、学年関係なくみんな兄弟みたいに遊ぶので、慣れてますかね。
とても大人びたソウスケくんの返事に、話を聞く大人たちは感心するばかり。それもそのはず、同級生がいないので、学校生活は先生や大人たちと話す機会が街の子どもに比べて圧倒的に多いのです。
マサキさん:そうなんや。中三だから、今年受験やね。高校はどうするの?
ソウスケくん:橿原の寮に住んで、そこから高校に行くことになります。
チサさん:そうか、村を離れなきゃいけないんやね。
上北山村の子どもたちは、そのほとんどが高校に通うために家を出て、寮暮らしを始めます。そんな田舎で育つ子どもたちの生の声を聞けるのは、田舎の子育てに関心のある村上家にとっては貴重な材料です。
リョウくんは木製の遊具で遊んだり、村の子どもたちと話したり、チサさんのところに戻ってきたりしています。ハルくんは元気いっぱいに、おもちゃで遊んだり、ボウリングをしたり、お姉さんにかまってもらったり、とても楽しそう。



最初は少し緊張気味だった二人も、いつの間にかすっかり馴染んで、まるで上北山の子どものようです。
小谷さん:よし!体育館行こうか!
小谷さんの声掛けで、みんなで体育館で遊ぶことに。各々のペースで、駆けていく子もいれば、のんびり歩いていく子も。子どもたちはそれぞれ、実に自由です。とちの木センターの体育館は、住民の健康増進施設でもあるため、器具がなかなか充実しています。その最たるものが、ボルダリングウォールでしょう。

運動が大得意のマサキさんはスイスイと登っていきます。

ハルくんは、何度も何度もランニングマシンで走り込みをしていました。その様子は、テレビなどで見るどこまでも自分を追い込むアスリートかのよう。とにかく「体を動かしたい」という欲求があるのが、誰の目にも明らかな少年です。

リョウくんも、2年生のアユくんとバスケットボールをしたり、野球をしたり、鬼ごっこをしたりして、額に汗を滲ませていました。



体育館で目一杯に遊んだら、すっかり夕方になっていました。集まってくれた親子の皆さんにお礼を告げて別れ、一同は、村上家の宿泊先である「民宿100年」へ。ここは、ホストの小谷さんが経営するお宿です。



小谷さんから設備や過ごし方の説明を受けた後、村上家の皆さんはちょっと一休みタイムに。その間、小谷さんはじめプログラムの運営スタッフはmossumoの二人がリノベーションしたレンタルスペース「木和田テラス」へ移動し、BBQの準備に取り掛かります。
小谷さんが用意してくれたお肉、おにぎり、手羽先、おつまみ、柿の葉寿司、飲みものなどがテーブルの上に並べられ、同じ敷地内にアトリエを構える写真家の村上由希映さんと夫の弘好さんからも、ノンアルコール飲料やお酒の差し入れもいただきました。
時刻は18時00分。村上家の皆さんも到着し、炭の火がいい感じになったところで、歓迎会BBQのスタートです。

季節外れの屋外BBQは寒さの心配もありましたが、この日はそこまで気温が下がらず、薪ストーブの熱と少しひんやりとした空気が相まる心地よさの中で、食事と会話をワイワイと楽しみます。いつ移住してきたのか、どうやってここに決めたのか。何の仕事をしているのか。いろんな話が交わされます。

実はここには、昨年の「暮らす奥大和」参加者で、その後上北山村への移住を決めた西岡さんも駆けつけてくれていて、元焼肉店のエリアマネージャーというお仕事の経験を活かして、とても上手にお肉を焼いてくれます。


リョウくんも、大人たち相手にあーやでこーやでと、いろんな話をしてくれます。やがて村役場に勤める真下さんご家族、村内のホテルで働く西田智子さんも足を運んでくれました。お二人も、それぞれ外から移り住んでこられた方々です。



昼間にあれだけ走り回ったハルくんは、まだまだ元気いっぱい!
マサキさん:もしもこの村に住んだとして、困った時にどうしたらいいかすぐに聞ける人がこれだけいるというのは、すごくいいですね。
この日の最後、マサキさんはそう感想を語ってくれました。

まだまだ飲み足りない大人たちのことはさておき、小学生の子どもたちを大人の都合で夜更かしさせないためにも、また明日への備えのためにも、少し早めに解散。初日が幕を下ろしました。

夜中ザザッと降った雨があがり、二日目の朝は瑞々しさで満ちていました。


よく眠れたという元気いっぱいの村上家とともに、今日は上北山村の「遊び」を知ってもらおうと、遊びの達人・サブさんを訪ねます。

途中、大きな虹がかかっていました。

西原区あるサブさんの工房に到着すると、昨日は予定があって来られなかったmossumoの久米恭子さんも合流し、いざ工房見学へ。
久米さん:サブさーん!おはようございますー!

中に入ると、サブさんが長年この場所でものづくりをしてきた歴史を物語る、道具や工具、何に使うのかわからない素材と思われるいろいろがあちこちに置かれ、薪ストーブの煙がもくもくと漂っています。

サブさんは、上北山きっての川釣りの名人。シーズンになると日がな釣りに出ているので、村内を車で走れば大抵サブさんを見かけるのだとか。

そんなサブさんは、ご自身で川釣りに使うルアーを製作しています。ご本人は「買う金がなかっただけやで」と笑いますが、お話を聞きながら、ルアーづくりを一部見学させていただきました。



サブさん:これは作るのに多少時間がかかるから、今イチから作ってもらうのは難しいけど、色付けやったらできるわ。やってみるか?
リョウくんは色付けにチャレンジしてみることに。ハルくんは「外で遊びたい!」とお母さんを連れ出します。二手に分かれて、それぞれに過ごす時間になりました。


リョウくんはマッキーとルアーを手に取り、模様をつけていきます。色づかいや柄を迷う素振りがなく、絵を描いたり、ものづくりをするのが得意な様子が伺えます。

家族4人分、素敵な色使いのルアーが完成!サブさんからは「リップ」と呼ばれる、ルアーに動きをつけるための部品の付け方なども教わりました。

サブさん:今度はゆっくり釣りしにおいで。いくらでも教えたるから(笑)。
やさしいサブさんに別れを告げ、続いては白川区へ。ここでは、移住者向けに村が整備した賃貸住宅を見せてもらいます。



4部屋ある和風の平屋で、使える建具などは利活用してリノベーションされたこの物件。キッチンは土間になっていて、素敵に改装してあります。
チサさん:こんな家いいね。広さも十分。
マサキさん:平屋はいいよな。

そんな会話をしていると、ハルくんが「100周しようぜ!」と小谷さんを誘い、建物の周りをぐるぐると走りだしました。しかし、登山ガイドであり、100km歩くという過酷なレースにも参加する小谷さん。体の仕上がり方は常人のそれではなく、綺麗なフォームの走りで、ハルくんに余裕でついていきます。
マサキさん:小谷さんすごいですね(笑)
小谷さんの鉄人ぶりに驚いていると、気が変わったハルくんが「遊ぼう!」と、マサキさんとチサさんを外に連れ出します。物件見学は早々に終わりを告げ、バレーボールの円陣パスが始まりました。

小谷さん:1、2、3、4………!
みんな運動が得意なので、レシーブがどんどんつながります。掛け声と笑い声が上北山の空へと響き渡っていました。

そうこうするうちにお昼近くになったので、「民宿100年」に戻って荷物を持ってチェックアウト。ここで再び久米さんと村上弘好さんも合流し、みんなで記念写真を撮ったら、今回のプログラム最後の訪問先「WASAMATAHUTTE(以下、ヒュッテ)」へ向かいます。
ここは、1982年に開業し長らく登山客に愛されてきた旧和佐又山ヒュッテを村がリニューアルオープンした山小屋兼キャンプ場。現在は、村の外郭団体「一般社団法人ツーリズムかみきた」が運営しています。標高約1150mという関西一の高所にあるキャンプ場として、登山客やキャンパーたちに人気のスポットとなっています。
久米さん:この時期、和佐又山は道が凍ってることが多くて、四駆の車じゃないと登れないことも多いんですけど、今日は大丈夫そうですね
ただ、残念なことに、上に着いた途端に強い雨が降りはじめ、風も強くなってきました。標高も上がったので、気温もググッと下がり、寒い!

車を降りて、みんなヒュッテに駆け込みます。

中に入ると、薪ストーブの温もりが建物中に広がって、外の寒さが嘘のよう。


みんな順番にお昼ご飯を注文。マサキさんはバターチキンカレー、チサさんはキノコ餡かけうどん、リョウくんはカレーうどんで、ハルくんはフレンチトーストを選びました。

料理が来るまでのあいだ、ハルくんは小谷さん・久米さんとトランプゲームに興じ、リョウくんは弘好さんとウォーリーを探します。



各々時間を過ごしていると、順番に料理ができあがってきました。全部揃うのを待っているとせっかくの料理が冷めてしまうので、届いた順にいただいていきます。




お腹がいっぱいになったら、いよいよプログラムも最後。それぞれに今回の滞在を振り返ってもらいます。まずはマサキさんから。

マサキさん:ずっと笑ってられるなって思いました。なんて言うんだろう、子どもが喜んでいる顔を見れる場面が、街にいるときより多いなって思いました。本当にあっという間の2日間で、いろんな人に出会わせてもらって楽しかったです。
夏に来たとき以上に、ここに住んでいる子どもたちと出会えたてよかったです。前は「祭り」って感じだったので。今回は「コミュニティ」に入らせてもらったから、外からじゃなくて中から、それを味わえたのが一番よかったですね。普段の子どもたちの様子を見られたが感じがありました。ソウスケくんに、上北山村のことをたくさん教えてもらいました(笑)。ありがとうございました。
続いてチサさんです。

チサさん:今回特に思ったのは、地域の一人ひとりの価値観がちゃんと大事にされている感じがすごいなと思いました。「子ども」じゃなくて、「◯◯ちゃん」として、その子の居場所があるんだなって。しかも、この子たちが来たらちゃんと迎え入れてくれて、ソウスケくんは「次来たときは外で遊ぼうか?」って次のことまで話してくれてて、ウェルカムな感じを嬉しく思ったのが、一番印象に残りました。ありがとうございました。
そして、小谷さん。

小谷さん:学校見学ができたらよかってんけど、それに近いことを体験してもらえたんじゃないかと思いました。自分の子どもは大きくなってもう村を出てしまってるから、最近あんまり村の子どもたちの様子を見ることがなくて、みんながまとまっているのを見たのは久しぶりで。あのソウスケくんがお兄ちゃんになったんだな、というか長みたいになってるやん(笑)、と思ったりして、おもしろかったです。またいつでもご案内などするので、気軽に連絡してくださいね。
最後は、久米さんです。

久米さん:夏に続き再び来てくださって、一緒に遊んでもらってうれしかったです。白川に行ったときに、ご近所の方が「子どもの声が聞こえると思ったら」ってうれしそうに言ってて、「また来てくれるといいねぇ」っておっしゃってました。そんなふうに、子どもの声が集落に響くとみんなに喜んでもらえるので、のびのびと走り回ってくれてよかったです。今の暮らしがあるので、すぐに移住とはもちろんならないかもしれないですけど、また、たびたびいらしてくれたらうれしいです。
夏と冬に来られたんで、次は春と秋にまた来てもらって(笑)。ここの下には釣り堀みたいなところがあって、川で釣り体験ができるんです。サブさんのところで作ったルアーをまた持っていったら針をつけてくれるから、それで釣りができますし、まだまだ行ってもらいたいところがいっぱいあるので、ぜひまた、一緒に遊んだりしましょう。ありがとうございました。
こうして、1泊2日の工程が終了。名残惜しそうな子どもたちを車に乗せ、村上家の皆さんは帰路につきました。


そこに住めるか住めないか。仕事や家族、子どもなどさまざまなタイミングが重なって、移住は実現するものです。村上家の皆さんは、「子どもたちがのびのびとできる」をテーマに、他の地域も訪問して、今後もさまざま体験されていくでしょう。
最終的な移住先が上北山村でなかったとしても、この上北山での経験が比較のための物差しとになって、マサキさんとチサさんの、村上家にとっての幸せの解像度を高めるきっかけになっていたら、それだけでも、この滞在はとても尊い機会になるだろうと思います。
そして願わくば、ご縁がつながって、上北山村の住人になった村上家の皆さんにいつかお会いできる日が来たらとしたら、きっと飛び上がるほど嬉しい出来事になるでしょう。そんな個人的な願いを記して、このレポートを終わります。
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